2021年度第2回温泉まちづくり研究会を開催しました(10月25〜26日)

2021年度第2回研究会を2021年10月25日(月)〜26日(火)、由布院温泉で実施しました。概要は以下のとおりです。

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10/25(月)
研究会第1部
<開会挨拶>
温泉まちづくり研究会代表 宮﨑光彦氏
(1)各温泉地の動向と取り組みの共有
(2)温泉まちづくりとしての「宣言」について

10/26(火)
研究会第2部
<開会挨拶>
九州運輸局長 河原畑徹氏
(1)講演・パネルディスカッション
<講演>
「観光庁が考える宿泊施設・宿泊産業の今後について」
観光庁観光産業課長 柿沼宏明氏
<パネルディスカッション>
各温泉地代表と柿沼氏との意見交換
(2)座談会
「コロナ禍で改めて考える「旅」と「地域」 ~地域があるから宿がある、暮らしがあるから旅がある~」
(株)亀の井別荘 相談役 中谷健太郎氏 
(株)玉の湯 代表取締役会長 溝口薫平氏 
コーディネーター :(株)デンソー社外監査役、(株)資生堂社外監査役 後藤靖子氏 
(3)総括ディスカッション
「コロナ禍で改めて考える温泉地のこれから」
<閉会挨拶> 
(公財)日本交通公社会長 末永安生   

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当研究会では毎年、7つの会員温泉地のいずれかで現地開催するのが恒例となっており、今年度は由布院温泉での開催となりました。
現地でのリアル開催と合わせて、Zoomを使ったオンライン配信を行いました。緊急事態宣言が解除され、感染者数も全国的に減少傾向に転じたとあって、多くの会員の方に現地参加いただきました。

10月25日の第一部は亀の井別荘内の湯の岳庵で開催しました。開会にあたり道後温泉旅館協同組合の副理事長で当協会代表を務める宮﨑光彦氏は「皆さんにこうしてリアルでお会いできるのはまことに嬉しい限り。今日は旅の本質、旅館の持つ存在意義や存在価値、またコロナに負けない温泉地づくりについて共に考えていきたい」と挨拶しました。

続いて、会員温泉地の最新状況や取り組みの共有を行いました。
今回の開催地である由布院温泉を代表して、由布市まちづくり観光局代表理事であり、当研究会顧問の桑野和泉氏は「由布院温泉はずっと滞在型保養温泉地を目指してきた。景観と交通は私たちにとって非常に大事に要素であり、それらに対する取り組みを今一度強化している」と述べました。
この言葉を引き継ぐ形で由布院温泉旅館組合代表理事の冨永希一氏は「原点回帰ということで安心安全をしっかり謳うとともに、由布院は観光地ではなく、生活型の保養温泉地であることをもう一度PRしていく」と述べました。
その後、コロナ禍で改めて認識した「温泉地として大切にしていきたいこと」を温泉まちづくり研究会として確認し、共有する「宣言」の内容についてディスカッションを行いました。

10月26日の研究会第2部はゆふいんラックホールに会場を移し、前半は本研究会会員限定で実施。九州運輸局長の河原畑徹氏から「観光事業者にとって苦境が続く中、自分たちの観光地のあり方について考え、進む方向を議論することは非常に素晴らしい。行政としてもこの議論を取り入れながら、地域のお役に立てるよう努力していきたい」と開会の挨拶がありました。

続いて、観光庁観光産業課長の柿沼宏明氏が「観光庁が考える宿泊施設・宿泊産業の今後について」をテーマに、オンラインで講演を行いました。
柿沼氏は令和4年度の観光庁の予算概算要求の内容をはじめ、旅館を含めた宿泊産業に対する国の施策の概要を紹介しました。そして「宿泊業者の9割が中小企業に該当し、旅館は家族経営も多い。積極的な投資やマーケティングの欠如により、旧来型事業モデルから脱皮できず、赤字が続き施設も老朽化するという負のスパイラルに陥っている旅館も多い」と、宿泊産業の現状と課題について述べました。
柿沼氏は、旅館について、「日本独自の宿泊文化であり、地域の歴史・文化に裏付けされ、地域固有のストーリーが集約された『地域のショーケース』と言える。将来に引き継ぐことが我々の責務である」と述べました。
そして旅館が抱える課題解決策として、財務諸表の作成などによる経営の可視化や顧客管理のデータベース化、地域における顧客情報の共有化による統合マーケティングなどを具体的に示唆しました。講演後は、各温泉地代表との間で質疑応答と意見交換を実施しました。  後半は地元の観光事業者の方々にも公開し、「コロナ禍で改めて考える「旅」と「地域」~地域があるから宿がある、暮らしがあるから旅がある~」をテーマに座談会をおこないました。

登壇者は、由布院のまちづくりを牽引してきた、亀の井別荘相談役の中谷健太郎氏と玉の湯代表取締役会長の溝口薫平氏のお二人です。ファシリテーターは、旧運輸省に在籍時から20年以上お二人と親交のあるデンソー及び資生堂社外監査役の後藤靖子氏に務めていただきました。お二人の発言を一部ご紹介します。

「正義を振りかざして、この町はこれだ、あんたたちとは意見が合わんということを磨いていくのが観光ではないと。(中略)宿屋は何するかってのはね、気持ちのいい人間関係を作らなならんですよね。それはもう結局、言葉だと思うんですよ。わしら今、言葉からかかろうと思うて。まず観光は仲間以外の人との気持ちのいい出会い。そのためには言葉やと。仲間同士が気持ちいいのは当たり前で、酒飲んで歌ったらすぐできあがるんです。よその人と仲のいい出会いをするちゅうのはそうとう手がいる」(中谷氏)

「まあ、いろんなことを体験してこれた、そして生き延びた、したたかにしなやかに生き延びたかなというような気がして。それと、いろいろ考えてみると、由布院の場合は仲間がいたんですね。それを同調してくれる仲間がいて、お互いがそれぞれ自分を主張しながらうまくまとまっていった。私いろいろ考えるんですけど、やっぱり景観っていうかね、由布院という風土がそういうものをじわりじわりとね、育ててくださったんじゃないかと。その風景をもう一度私達は今から作っていかなきゃならんと。あまりにもそういう風土なり景観を壊してきたんではないかというような反省を含めてですね」(溝口氏)

その後、「コロナ禍で改めて考える温泉地のこれから」をテーマに総括ディスカッションが行われ、座談会への感想や今後に向けた想いなども含めて活発な意見が交わされました。
最後は(公財)日本交通公社の末永安生会長がオンラインで閉会の挨拶を行い、2日間に渡る研究会を締めくくりました。

温泉まちづくり研究会では、コロナ禍での経験や第2回研究会でのディスカッションをふまえ、改めて大切にしていきたいことを「温泉まちづくり研究会 由布院宣言2021」としてまとめました。詳細はこちらをご覧ください。

「温泉まちづくり研究会 由布院宣言2021」(PDF版)はこちら

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